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「やりたいことがたくさんある」と藤原麻里菜さん。優先順位をつけ、個人制作でも締め切りを決める。「本当は思いついたその日に勢いに任せて作るのが好きなんですけど」=東京都中央区、土居新平撮影
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 役に立たない無駄なものを発明し続け、12年目になる。コンテンツクリエーターの藤原麻里菜さん(31)が「無駄づくり」と題し、動画サイトに発表した作品は300を超えた。効率化こそが善とされがちな現代社会で、なぜ無駄なのか。「雑で不器用」と自認する彼女はなぜ、作り続けるのか。

 例えば、「ビニール袋が風に舞うのをずっと見ていられるマシン」。50センチほどの透明な箱の中に、小さなポリ袋が入っている。それに下から風を吹かせることで、袋が箱の中で舞い上がる。

 でも、それだけ。まちなかで袋が風に舞う姿が好きで、人工的に再現したいと思った。「割と無駄で、自分の中では、やりたいことができたなって感じです」

 ほかにも、水を流すと、びしゃびしゃとはねるように計算されたスプーン。コンビニ弁当を電子レンジで温めた後、中に入っている「ピンク色の漬けもの」だけを冷やし直すマシン。人見知りでも安心な「どこから見ても目が合うメガネ」は、100円ショップの老眼鏡で作れる。これらは、思わず見入ってしまう「無駄づくり」のほんの一部だ。

 横浜市で生まれた。小さいころから絵を描いたり、楽器を弾いたり、物を作ったりと、表現することが好きだった。最初は周囲の大人たちに褒められたが、徐々に変わった。「私は下手だった。上手な絵とか、緻密(ちみつ)な絵を描く人が褒められるようになった」。誰もが納得する、完成したものが求められていると感じるようになった。

 転機が訪れたのは19歳。高…

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